響きを豊かにするために ー ピアノ演奏における芸術的表現

大野眞嗣

はじめに

私自身、留学時代、ドミトリー・バシキーロフやタチアナ・ニコラーエワ両氏との出会いから、大きな影響を受け、ロシアの4大流派の中の1つ「ゴールデンヴァイザー流派」のピアニズムに傾倒していました。

しかし、ここ数年来、世界中のピアニスト、国際コンクールで圧倒的に上位を占める「ネイガウス流派」の継承者であるディーナ・ヨッフェ氏と親交を深めていく中で、彼女自身から多くの影響を受けたばかりでなく、指導法を学ぶことができました。
今では私自身は、「ネイガウス流派」、「ネイガウススクール」のピアニズムを研究しています。

「ネイガウス流派」は、あのスビャトスラフ・リヒテルやエミール・ギレリスを育てた、偉大なる教師、ゲンリッヒ・ネイガウスに端を発する素晴らしいピアニズムの継承者たちが多く存在します。

以前は、「ロシア流派」というひとくくりの言葉で感じていたピアニズムでしたが、今ではそれぞれの流派、スクールの伝統というものを認識してまいりました。

はじめてディーナ・ヨッフェ氏が、我が家にマスタークラスのためいらっしゃったときの言葉を今でも忘れません。
「あなたはバシキーロフに学んだから、ゴールデンヴァイザー流派ね!?私はネイガウス流派だけれでも、それでも構わない?」
ヨッフェ氏に限らず、みな自身の流派というものにプライドを持っているものなのです。

私が帰国し、早いもので15年の月日が経ち、そろそろある程度の考えがまとまってきたことを実感しています。このページをご覧になる方にとって、このようなピアニズムに興味を持つきっかけとなり、日本においても、より研究が盛んになることを願っています。 

 


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